カクスコ

2006年12月 5日 (火)

元気です

「お元気ですか?」と語りかけられて驚いた。

まさか会えるとは思わなかったからだ。現在のカクスコの6人に。

2002年1月に解散した劇団カクスコのDVDのセット「お元気ですか?」が、

ファンの要望に答える形で発売されることになったと、以前の記事にも書いた。

カクスコ帰る 「お元気ですか?」

けれど私は、以前の舞台の録画をそのままDVDにしただけのものだと思っていて、

何故だかカクスコのメンバーが再集結してコメントを入れるという可能性を

全く考えていなかった。

昔のVTRに現在の出演者が出てきて、その内容やその頃の事について

素で話をするというのは、良くあることだが、彼らの場合は違っている。

きちんと構成されているのだ。会話も動きも。

あの舞台で見せてくれた、決まりきった流れではあるけれど、馬鹿馬鹿しくて

情けなくてとてつもなく温かい、そんな彼らの独特の空間がそこにあった。

三枚組みのDVDそれぞれに短い時間ではあるが、彼らが現れて、今の「カクスコ」を

見せてくれた。あろう事かアカペラまで披露してくれたのだから、これはもう

カクスコの2006年の新作をちょっぴり見せてもらったようなものだ。

カクスコ帰る 「お元気ですか?」の記事で私は

「喪失感は保存映像というような代替品で埋められるものではないけれど…」

という書き方をしていた。

私たちがDVDを購入するという形で働きかけることが「お元気ですか?」という、

彼らへの語り掛けになるのではないかとも。

でも彼らは今の姿で今のカクスコを見せて語りかけてくれた。

「お元気ですか?」と。

「元気です」と思わず素直に答えたくなるような温かさで。

いや、決して元気とばかりはいえない日々だけれど、本当はこの間も色々あって…。

でもやはり「元気です」と答えたくなる。

「バカですよ~カクスコは。見てる人にバカがうつっちゃうんじゃないの?」

そんな風にいわれて笑いながらもちょっと涙ぐみそうになる。

いつかまた。

そんな言葉が素直に浮かんだ。

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2006年9月 2日 (土)

カクスコ帰る 「お元気ですか?」

劇団の正式な解散は2002年1月だが、私が最後にカクスコを観たのは2001年10月の

最終公演「いままでどうもありがとう」の大阪公演になる。

カクスコは1987年に結成された、メンバーが脚本、演出も出がける主宰中村育二、

岸博之、井之上隆志、山崎直樹、近藤京三、原田修一の6人による劇団。

年末はカクスコを観ると決めていた。年に二回公演があることもあったが、12月には

必ず新作がかかった。私の中での年末の風物詩的劇団でもあった。

一応骨格になる設定があり、それに沿ってストーリーは進められるが、どちらかといえば

それはあまり重要ではない。そこにはいつもあまりさえない男たちの日常があり、

どうでもいいようなこと、例えば天井近くにさされた押しピンの気持ちに思いを馳せて

語ってみたり、床の軋みを見つけたといってはそのウキュウキュいう音を嬉々として

延々鳴らしてみたり、歌ってみたり、相撲してみたり、些細なことで喧嘩してみたり…、

そんなささやかで情けなくて楽しげな彼らの姿があって、私たちは満杯の幸福感を

もらっていた。変わり映えのしない設定や彼らだからこそ、安心していつも

会いに行くことができた。

中村は常々「メンバーが一人でも抜けたらカクスコを辞める」と言っていたが、

その言葉通り、2001年、近藤の脱退によって、あっさりと(部外者の私から見れば)

解散が決定してしまった。

近藤の脱退の理由も「近藤京三故郷へ帰る」という、中村がHPで解散の報告をした

文章の中で「カクスコを抜ける理由などこれ一つで充分、カクスコを10回抜けても

お釣りが来ます」 と書いていた通りで、今まで私たちが観ていた近藤の人柄を

決して裏切らないものだったし、何よりも終わり方そのものがいかにもカクスコ

らしかった。だから私たちは、彼らの最後の舞台に万感の思いをこめて、

ただ大きな拍手を送るしかなかった。

時々TVで録画したものや唯一販売していた公演ビデオ「年中無休」を見ることがある。

落ち込んで、考えを巡らせては寝付けない、目を閉じることにふと怯えを感じるような

そんな夜、カクスコは利く。

ビデオを流して目を閉じ、馬鹿馬鹿しいようなやり取りや、優しいアカペラの歌声に

耳を傾けていると、いつの間にか静かな眠りに落ちている。

そんなカクスコのスペシャル DVD-SET「お元気ですか?」が発売されることになった。

たのみこむというユーザーからリクエストのあった商品を、受注、予約、即売という形で

販売する、消費者リクエスト型ショッピングサイトでのユーザーのリクエストに応じる形で、

9月2日からの仮発注の募集が始まった。200人の発注が集まれば生産が確定との

ことだったが、ものすごい勢いで初日の夕方には200人突破し、生産が確定したらしい。

大好きなものが失われるのは寂しい。その喪失感は保存映像というような代替品で

埋められるものではないけれど、それでもその存在の記憶を風化させたくないという、

自分と同じ思いを持つたくさんの人の存在を感じることは嬉しい。

そして舞台がなくなったことで直接伝えることが出来なくなった私たちの思いを

彼らに伝えられたら嬉しい。

「お元気ですか?」そう話しかけるみたいに。

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