犬の心にゆったり感
犬の心がわかるようになったのはごく最近の事で、
初めて知った時はちょっとした驚きだった。
でもそれよりさらに不思議だったのはゆったり感かもしれない。
犬の心にゆったり感って。
一体何の話をしているのかと訝しく思われているに違いない。
「犬の心」も「ゆったり感」も若手お笑いコンビの名前である。
名前というのは難しい。
全く知らない人にとっては、それがどんなものであるかということを推測する、
最初の手がかりみたいなものにもなるし、それ以後の印象も随分変わる。
本でも映画でも舞台でもタイトルの影響はあるものだけれど、芸名やコンビ名というのは、
ずっと背負っていくものなので、その影響力は一つの作品の比ではないが、
その存在がそれなりの認知をされていくと、どんな名前でも受け入れられていくという、
その良し悪しの評価は結構曖昧でもある。
昔から奇抜なコンビ名はあったのだろうし、多分私が知らないだけで、
お笑い界には今もこれ以上に奇抜で多種多様なコンビ名が溢れているに違いない。
たまたま知ったこの二組の名前が気になるのは、単に私の好みというだけだったりする。
ゆったり感。
なんだか意味もなく呟いてみたくなる。
「ゆったり感」という名前のコンビが一体どんなネタをするのか、非常に気になる
ところなのだけれど、まだ一度も観る機会がなく、いまだに顔すら知らない。
そして実は、ネタ自体にハマっているのは「犬の心」の方だったりする。
彼らは結成10年を超えるコンビだけれど、私はテレビでは一度も見たことがない。
でも最近は当たり前のようになった、ネット配信では頻繁に見る事が出来る。
初めて見た時、面白いんだけれど、ちょっと苦手。そんな印象だった。
ツッコミの押見泰憲のがなりたてるような声が気になったせいでもある。
そう思いながらも、どこかにひっかかって仕方がないので、続け様にいくつかネタを見る。
そうすると不思議なことに、苦手だったその声が妙に後を引く。
そのがなる瞬発力と、そこから絶妙のタイミングで引くという緩急が面白いし、
相方の池谷賢二の演技がマイペースでブレがないので、押見の緩急のあるキャラとの
バランスがとても良い。
観たネタの全てが面白いと思ったわけではないけれど、犬の心というコンビのもつ
独特の世界は充分魅力的だった。
独自の世界を確立してそこに立ち続けるのは、そしてそれが受け入れられるというのは
とても難しいことだし、そこには確固たる答えはない。
彼らの作る世界は、あるといえばある、ないといえばない、そんな曖昧なものに思える。
「演劇は風に書いた文字」 といったのは、演出家のピーター・ブルックだったっけか?
同じ意味ではないけれど、それに近い気がする。
今間違いなく掴んだものが明日は手の中にはない。
そんな繰り返しの中で、それでも尚彼らは造り続けるのだということに心動かされて、
彼らの作る世界を見続けているのかもしれないなと思ったりもする。
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