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2008年11月24日 (月)

情熱と愛着と

結局、シーズン最後の試合にも彼の出番はなかった。

「戦力外」という通告を受けた彼にとって、18年所属した横浜ベイスターズでの

生涯最後の試合であるにもかかわらず。

それなのに、

それだから、というべきか、試合後、球場を埋める大勢のベイスターズファンから

吼えるような声援が起こり、それはいつまでも止むことなく続いた。

彼らが呼び続けていた名前は、「たかのり」 背番号51 鈴木尚典。

父が阪神ファンなおかげで、対外的には家族で阪神タイガースを応援している、

ということになっている。

ただ、私も母もそれほどタイガースに熱中しているわけでもないので、

他チームにも応援している選手が意外と多くいる。

以前にも書いたけれど、桑田真澄投手(18)や津田恒美投手(夏に思い出すひと)が

そうだし、顔面に受けたデッドボールの大怪我から復帰した、元巨人軍の

村田真一捕手(現コーチ)のことは、復帰から引退、コーチとして活躍している

今に至るまでずっと応援し続けている。

そして横浜ベイスターズの鈴木尚典選手もその一人だ。

ただ前述の三人に明確に応援する理由があったのと比べて、実は鈴木尚典には

それがない。きっかけは何か?と訊かれても良くわからないとしか答えられない。

「彼のしなやかで柔らかい、抜群に華麗な打撃フォームが好きだから」

これは理由になるだろうか。

彼が二年連続で首位打者を獲得した頃のベイスターズはとにかく強かった。

1997~1998年頃のことだ。

マシンガン打線と呼ばれた見事に途切れなく打ち続ける打線の中に彼がいた。

細身で長身の彼の打撃フォームはひときわ目を引いた。

打撃フォームというのは「形」の問題で、野球選手としての能力や資質とは

必ずしも直結するものではないだろうけれど、それでもバッターがバッターボックスに立つ

あの短い時間の中では、彼らの選手としてのポテンシャルのみならず、

時には人としての在り方も、如実に現れる。

彼の立ち姿が何を語っていたか、明確に説明することが出来ないのだけれど、

少なくともその立ち姿が語る、彼の中のなにものかに惹かれて応援していた。

彼が打撃不振に陥りスタメンから外れ、代打でしかその姿を見ることがなくなってからは

彼の出場機会が目に見えて減っていくことに、心を痛めていた。

彼の不振は数年に及び、監督が交代しても、出番が増えることなかった。

だから、戦力外通告を受けたというニュースは、悲しかったけれど、

決して意外ではなく、むしろとうとう来たかという思いがした。

だからといって彼が引退をするなどとは思わなかったし、他球団で心機一転することで、

もう一度全盛期の活躍を取り戻すことを期待すらした。

彼は引退と、他球団での現役続行で悩んだ中でどうしても消えなかったものが

横浜高校時代から21年間過ごした横浜への愛着だったと語っている。

「自分は横浜に育てられた選手だという自負がある。他球団に移籍し、

ぼろぼろになってでも現役にこだわるという選択肢を考えながらも、最終的には

横浜を去って他のチームでプレーする自分の姿が想像できなかった」と。

選手としての活躍をもっと見たかったというのは、ファンとしての感傷に過ぎない。

最後の試合、声を振り絞って彼を呼ぶファンの姿を見たら、彼の横浜、そして

横浜で彼を応援する人々への愛着は当然のことなのだと感じる。

スポーツというものが不思議なのは、選手と応援する側の人間との関係は

決して一方通行ではないということだ。

お互いに与え合っている。

大きな葛藤の末、鈴木尚典はファームのコーチとしての新たなスタートを切った。

高校時代の監督には「鈴木尚典以上の選手を育てろ」と発破を掛けられているらしい。

そして今日、来年3月のオープン戦で鈴木尚典の引退試合が行われることが決まった、

という嬉しいニュースを聞いた。

彼が悩んで決めたことへの一つの答えでもある。

ファンにとってはわずかに残る感傷を振り切って、彼の踏み出した新たな人生へ

心置きなく声援を送ることの出来る、そんな大切な日になる。

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コメント

最後の日の球場に私もいました。
鈴木尚典のことを書いてくれて嬉しいです。ありがとう。
これからも忘れないで応援してやってください。

投稿: 横浜の星 | 2008年11月27日 (木) 13時51分

>横浜の星さん
コメント頂きありがとうございます。
あの球場にいらっしゃったんですね。
本当にすごかったですね。
私はテレビで見ていただけでしたが、
ファンの皆さんの叫びに胸が熱くなりました。
正直に言って引退は残念でならないのですが、
これからの裏方としての彼の活躍にも
声援を送りたいと今は思っています。

投稿: ニノ | 2008年11月30日 (日) 01時48分

ニノさん、ご無沙汰してます(^^)

なぜかプロ野球にあまり関心なかったんですよ。Jリーグがスタートしたあたりからは、やっぱサッカーのほうが面白いなあって。ますますプロ野球から遠ざかってしまいました。それが数年前に楽天が仙台に来たこともあって、しかも野村監督がきてからは、どうしたって興味が湧いちゃうんですね。まだ一度も球場に足を運んでいないのですが、来年こそは見物してこようかと思ってます。

いろいろあってブログ引っ越しすることになりました。

来年もよろしくお願いします!良いお年をお迎えください(^^)v

投稿: kaku-san | 2008年12月29日 (月) 11時07分

>かくさん
コメント頂いていたのに長い間そのままにしていて
本当に失礼いたしました。
ブログを引越しされたんですね。
確認してリンク訂正も完了しました。

ほやほやしている間に年が明けてしまいました…。
忙しいという言い訳でブログをあまりに放置しすぎて
蜘蛛の巣がはりそうな勢いです。
今年は更新頻度のアップを目標に頑張ります。
こんな私ではありますが、本年もよろしくお願いいたします。

投稿: ニノ | 2009年1月 3日 (土) 15時21分

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